８　　　　　雑草も花のうち　　　　　　　　　　　　　　２００３．０６．１２．

　早くも入梅が宣言された。

　今年はすっきりした五月晴れの日が少なかったが、そのまゝの梅雨入りである。

　しかし今年は空梅雨でもあるという。その為か、昨日一昨日は福井や岐阜でタイガース

一軍の野球があり、昼間はカンカン照りの甲子園で二軍の試合があった。

　強い阪神は共に連勝した。嬉しかったのは、病気や故障で調整中だった福原、杉山、

的場、アリアスらがゲームに出られるまでに回復したことである。

　浜中も元気に２打点を挙げたし、短いインニングだったが守備にもついた。

　ライバルの巨人は１９点も盗られるお粗末だし、中日やヤクルトももたもたしている。

　どうやら阪神の今年の優勝は間違いなさそうになって来た。

　ケーブルテレビのお蔭で、鎌倉でも時折阪神の二軍の試合が見られる。

　庭の芝生には雑草が目立って来た。

　そろそろ芝刈り機の出番かと思うが、紀子や娘たちはその前に雑草を根から抜いて

置かないと種が飛び散るだけだからと反対されている。それなら早くその仕事を終えて

くれよ、と僕は待っている。草引きは二人の仕事で、芝刈り機は僕の分担である。

　世間はガーデニング流行りで、名前を知らない花が家々の玄関を飾るようになった。

　しかし我が家は古いタイプの広い庭を、最近は少々持て余し気味である。

　樹々が生い茂り、築山も草茫々。裏庭に至っては昼なお暗い有様である。

　あちこちで独り生えの草木が伸び、丹精して育てた昔からの樹木の景観を阻害して

いる。やむなく僕は重い腰をあげて、昨日は少し剪定鋏を動かしてみた。だがとても

手に負えない。むりやり口実を設けて早々に引き上げた。

　ところで雑草も傍に寄ってじっくり眺めると、実に可愛らしい表情をしている。

　中には可憐な花を付けたのもある。ムラサキカタバミなどは真に愛くるしい。

　それらを鋏や芝刈り機で切って殺してしまうには相当の抵抗を感じる。

　いったい、雑草とそうでない草とは誰が分けたものであるのか。それは人間の都合

勝手で決めたに過ぎないではないか。両者を差別するのは何故であるか。

　園芸研究家の柳宗民先生も、何かの記事で、同じ疑問を抱かれていた。

　園芸店で重宝される花も雑草も同じ草花、「いのち」である。

　それに寄生する虫も、それを餌に求めて来る鳥たちも、そして我々人間も、全て

同じ「いのち」である。

　人間はずっと長い間、人間本位に生きて来過ぎた。

　他の「いのち」を粗末に仕過ぎて来た。その報いを今少しずつ感じ始めている。

　僕はやはり、庭の手入れはそこそこにしておこうと思う。