２００５．０９．０７．

　　　　　　　　　　岡　峰根子　さん　を悼む

　　　　９月１日夜、小田一栄さんと竹尾嘉文君の二人
　　　から、岡峰根子さんの突然の死を伝えられた。
　　　　大変なショックであった。
　　　　後日、山本健太郎君にも今回の経過の一切を
　　　　教えて貰った。
　　　　事故は８月３１日早朝、法円坂でのジョギング
　　　中に起き、一緒の妹さんも重傷の由であった。
　　　　信号無視のトラックが突っ込んで来たものと想
　　　像出来た。約一日近くは身元不明でご家族にも
　　　連絡がつかなかったらしい。

　　　　岡さんとは高校１年の時に同級であった。
　　　　しかし当時の岡さんは勉強一筋で、僕はあまり
　　　お付き合いしなかった。樟蔭から来た一才媛だ
　　　との認識しかなかった。

　　　　驚いたのは、彼女が現役で京大法学部に合格
　　　したことであった。
　　　　当時、女子が大学に進学することさえ珍しかった
　　　のに、京大の法学部とはと、皆んな眼を丸くした。
　　　　僕の東大法学部でも女子はたった二人だった。

　　　　彼女についての消息はその後途絶えた。
　　　　結婚して高松に居るという話だったので、四国へ
　　　出張した折に一度だけ電話したことがある。

　　　　頻繁に連絡しあうようになったのは、平成５年７
　　　月の高津高校５期同窓会での再会以降である。
　　　　この時彼女は受付けの担当で、１時間ばかり
　　　早めに会場へ着いた僕とたっぷり話が出来た。
　　　　その折、二人は自分の足で歩いて旅を楽しむ
　　　という共通の趣味がある事を互いに強く認識した。

　　　　同窓会の翌日から、我々夫婦は４日間かけて、
　　　十津川・熊野縦断の旅に出た。総行程２８０キロ、
　　　うち歩行行程６０キロの旅であったが、この旅に
　　　ついて、先達の彼女から種々の助言を得られた。
　　　　同年１１月６日、我々は次に洛北を案内して貰っ
　　　た。京大出だから京都の地理には詳しかった。
　　　　出町柳から広河原行きのバスに乗り、峰定寺、
　　　常照光寺、山国御陵と遊んだ。この時の紅葉は
　　　素晴らしく、彼女が分厚い落ち葉の上で、喜んで
　　　飛び跳ねて踊った姿は未だに忘れられない。

　　　　　これを機に僕の洛北への興味は掻きたてられ、
　　　広河原、芦生、久多、小浜、鯖街道、安曇川、塩
　　　津、敦賀へと、幾度も足を伸ばす結果となった。

　　　　彼女もその後旅を続け、あちこちの旅先から何
　　　度も美しい絵を届けて来てくれた。

　　　　彼女の絵の才能は、遂に自作を展示する画廊　
　　　“えみる”を開くにまで至った。左の写真は４年前
　　　に山本健太郎君とお邪魔した時のものである。

　　そして山本君によれば、この画廊が、図らずも、彼女を鎮魂する会場になったという。
　　
　　今はこの痛ましい事故を乗越え、彼女が安らかに眠られるのをお祈りするばかりである。
　　我々があの世でまた語り合える時もそう遠くはない。
　　その時はまたご一緒にあちこち旅をしましょう。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　合掌