２００５．１２．２０．
「 ＡＬＷＡＹＳ 三丁目の夕日 」 を観る
・ 映画 「ＡＬＷＡＹＳ 三丁目の夕日」
今日、港南台シネマサロンで、表題の映画を観た。
評判通り、極めて感動的な作品であった。
これは「東京タワー」が建設中だった、昭和３３年の東京を舞台に作られている。
＜当時は、「携帯」も「パソコン」も「テレビ」もなかったのに、どうしてあんなに楽しかった
のだろう。＞ というのが、この映画のテーマである。
監督・脚本は、山崎 貴（たかし）。
出演は、吉岡 秀隆、堤 真一、小雪、堀北 真希、薬師丸 ひろ子、三浦 友和、らで、
皆んななかなかの好演であった。
原作は、連載開始から既に３０余年！空前のロングセラーとなっている国民的コミックで、
西岸（さいがん）良平作の「三丁目の夕日」である。現在も連載は続いているという。
最近は、ドラマや舞台劇で、マンガが原作になることの多いのが一つの驚きである。
・ 「昭和３３年」という年
昭和３３年（１９５８）という年は、僕にとっても懐かしい年である。
この年に僕は大学を卒業し、生涯の勤めとなった鉄鋼会社に入社した。
年回りは来年と同じ「戌年」で、僕は年男であった。
この年の日記の題名は「自立」で、今もそれを広げると当時の意気込みが伝わって来る。
当時の世相を断片的に紹介すると以下のようになる。
・ 日本が国連安保理で非常任理事国になる ・ 若乃花が４５代目横綱に昇進
・ 長嶋茂雄デビュー戦で４三振 ・ 南極観測隊が越冬断念、犬を放置して帰国
・ 世界初の関門海底トンネル開通 ・ 阿蘇山爆発で死者１２名 ・ 一万円札登場
・ 東京⇔大阪をこだま号が６時間５０分で結ぶ ・ 正田美智子さんが皇太子妃に内定
・ 国立競技場、東京タワー完工 ・ 第１回宝くじ発売 ・ 力道山国際選手権獲得
・ 東京主要駅に公衆電話設置 ・ 府中に運転免許試験場設置
・ 「駅前旅館」「嵐を呼ぶ男」「南太平洋」「老人と海」「十戒」「悲しみよこんにちは」
・ 「おーい中村君」「からたち日記」「有楽町であいましょう」「オンリー・ユー」
・ 何故この映画が客を呼ぶのか
この映画は封切後６週間を経過し、観客動員数は１５０万人を超えたと云われて居る。
原作を読むマンガ世代は当然ながら、映画を作った人たちも殆んどこの時代を知らない。
それなのに、彼らは新しい映像技術を駆使して当時の光景を再現した。
実際に当時を知る我々も違和感をそれほど感じない出来栄えであった。
あらすじを簡単に披露すると、以下の通りである。
＜東京タワーが完成するこの年の春、家族だけで自動車修理業を営む町工場に
一人の少女が青森から上京して来る。彼女は予想より会社が小さいことに驚く。
その向いには、芥川賞受賞を目指す三流文士が、子供向け雑誌に原稿を掲載
しながら、一人で細々と駄菓子屋を経営している。
この二軒を舞台に、人情豊かなドラマが様々に展開する。
テレビや電気冷蔵庫が入ったと云っては町中が大騒ぎになり、飲み屋の美人ママ
との儚い恋物語、子供同士の友情、原爆で家族を失った一人暮らしの町医者等々＞
・ 僕なりの感想
僕はこの映画の中で、まず、当時存在した季節感の有難味を痛切に感じた。
物語は春、夏、秋、冬、と一年間の話であったが、夏は暑い中でスイカを食べ、扇風機の
前に寝転んで風鈴の音を聞くこと、冬は鍋や湯たんぽで温まり、正月が来れば門松や注
連縄を飾って祝う楽しみがあったことを思い出した。今は年中同じでつまらない。
今と全く異なることの二つ目は、家族皆んなに共通した価値観が存在し、隣近所でも内緒
事が少なかったことである。それは家族全員が、一緒に、ラジオから流れて来るニュースや
音楽、娯楽番組を聴いて居た結果だと思う。今は家族も各家庭もバラバラである。
登場人物が全員善人で、互いに本音で付き合っていたこともあらためて思い出した。
昨今は、人は建て前やマニアルだけで動きがちで、多分に人間らしさを失っている。
昭和３０年代ともなれば、最早終戦直後のようなひもじさは解消し、将来への希望や夢が
生まれつつあった。それでいて、その後の環境悪化やバブル期のような堕落はまだ経験
して居なかった。
・ 主題歌から （抜粋）
空に赤く溶けてゆく太陽 人も町も染めて
「また明日」と手を振るように ゆらゆらゆれている
子供の頃も今も変わらずに 胸の中から僕を包むよ
心の奥の深いところで つながってゆくあたたかいもの
沈む夕日は明日をつれて ここへ必ず戻ってくるよ
愛は変わらない 愛は終わらない 愛は止らない
Ｉ ａｌｗａｙｓ ｆｅｅｌ ｙｏｕｒ ｌｏｖｅ
心はそっと 赤く照らされたよ 作詞 吉田 宏英
