気懸かりな北朝鮮問題　　　　　　　　　　　　　　　　０３．０７．３０．

１　　　　　はじめに

　
　昨年９月１７日、小泉首相の訪朝で「日朝平壌宣言」が出された時、僕は非常に興奮した。

　　＜　これでやっと日朝間も正常化する。　世界中でたった一人孤児であった北朝鮮

　　　　　も国際社会の一員になれる。　極東アジアの平和もこれで実現する。　・・・　＞　　

　そう信じて心から喜んだ。

　あの誇り高い北朝鮮が、面子を捨てて、それまで全否定してきた拉致を認め、工作船問題

についても今後は国際法を守ると約束したのである。僕には大変な驚きであった。

　５人の被害者が日本に帰国して来たので、僕は、今後日朝間で安全保障問題が正面から

協議される条件が整ったと思った。

　ところがその後、帰国した５人を日本が北朝鮮に戻さなかったことから事態がこじれはじめ、

核開発問題などが表面に出て来て、一切が元の木阿弥になってしまった。

　真に残念であった。

２　　　　　数々の疑問

　
　それにしても我々には北朝鮮についての疑問が多過ぎる。

　�@　　北朝鮮は何の為に拉致事件を繰り返してきたのか。

　�A　　工作船は何をしに日本へやって来るのか。

　�B　　北朝鮮は何のために核やミサイルの開発をしているのか。

　�C　　本気で韓国や日本、或いはアメリカを攻撃する気があるのか。又、その狙いは何なのか。

　　　　そもそも勝算はあるのか。

　�D　　金正日とはどんな人であるのか。何を考えているのか。国民の信頼に値する人なのか。

　�E　　もしそうでないとしたら、何故金正日打倒の動きが国内から起きないのか。

　�F　　北朝鮮の食糧不足の実体はどうなのか。どの程度の犠牲者が出ているのか。

　�G　　南北統一問題をどうしようと考えているのか。

　�H　　中国やソ連との関係はどうなっているのか。

　�I　　国民はどのような社会の実現を望んでいるのか。

　こうして数え始めるときりがない。

　果たして、北朝鮮もイランやイラクと同じ、悪の枢軸の一つと考えねばならないのかどうか。


３　　　アメリカの次の標的は北朝鮮？

　　
　アフガニスタンに次いでイラク戦争に一応の目途が付いた段階で、米国の次の標的は

北朝鮮に絞られて来ているという見方が一部に存在する。

　今年の３月には、米国第７艦隊と韓国軍合同の上陸訓練が韓国の浦項で行われ、国境

近くの内陸でも北朝鮮が侵攻して来たとの想定のもとに同じく合同で演習が行われた。

　これは各国報道陣にも公開して行われ、北への示威的意味がかなりに込められていた。


　現在米朝間で最大の問題は、北朝鮮が米国との約束を破り、公然と核開発を進めている

点にある。イラクと異なり、このことを北朝鮮も否定していない。

　更に米国は、北朝鮮がミサイルや核兵器をテロ組織や外国に輸出しようとしていると非難

し始めている。イラクのケースと同じく、米国の論理からすれば、これだけで開戦の大義名分

は充分なのである。


　現在、在韓地上米軍は３万７千人にのぼるが、これは北からの侵攻を非武装地帯内で食い

止め殲滅するという作戦を前提にしている。しかしそうした作戦はもう古いと考えられている。

　万が一戦争になった時、下手をすれば人質に取られるおそれのある地上軍を韓国内に駐留

させて置くよりは、これを縮小し、グアムや米国内の基地を強化し、第７艦隊と空軍を主力に

戦う方が得策だとする考え方が有力になっている。

　攻撃の精度が高まったので、ソウルの北、僅か２５マイルに配備されている北朝鮮の大砲

約１０００門を、これらの兵力で短期間に破壊するのは容易になっている。


　米国にとって焦眉の急を要する問題は、北朝鮮に核兵器製造の余裕を与えない事である。

　加えて来年１１月には大統領選挙がある。

　ブッシュ政権にとって、北朝鮮問題は再選を目指すに格好の手段である。

　危機感を煽れば国民は現政権支持に向うだろうし、基地を海外からネブラスカやミズリーに

移せば、軍事的には無意味でもカネの落ちる地元から歓迎される。


　これらの状況を考え合わせると、北朝鮮問題は決して日本も看過出来ることではない。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（続く・・・）