２０１５．１２．１３．

　　　　　　　　　　　　　　　　　静嘉堂文庫美術館を訪ねる

　　久し振りに世田谷の静嘉堂文庫美術館を訪ね、本阿弥光悦

　　（1558〜1637）、俵屋宗達（生没年不詳）、尾形光琳（1658〜17

　　16）、酒井抱一（1761〜1828）ら琳派の傑作を鑑賞して来た。

　　今年は本阿弥光悦が家康から鷹峯の地を拝領して４００年、

　　光琳が没して３００年とあって、京都国立博物館で「琳派展」が

　　開かれ、NHKのカルチャーラジオでも琳派研究の第一人者

　　河野元昭氏による放送が行われている。僕はこの講義で

　　「琳派」が日本美術史に残した偉大さをあらためて知った。

狩野派や圓山応挙・四条派といった流派では、各絵師は模写を通じて直接画技を学んだのだが、

琳派では時間や場所、身分が遠く離れた人々によって、主題や図柄、技法が単なる模倣では

なしに、発展的、独創的に受け継がれて現代にまで及んでいる。その点が面白かった。

その様相は、今日の展覧会の　「金銀の系譜」　というテーマにも凝縮されていた。

典型が京都育ちの放縦の芸術家＝尾形光琳と、江戸の大名家で生まれた酒井抱一である。

光琳が金箔地に「鶴鹿図屏風」や「燕子花屏風」を描いたのに対して、彼をこの上なく尊敬して

いた抱一は、銀箔地に「波図屏風」や「夏秋草図」を描いた。

「金の世界」と「銀の世界」は、太陽と月の関係に似ていて、双方共に完璧であった。

　この美術館は、三菱の岩崎弥之助、小弥太二代の父子
　によって造られた。国宝７点、重要文化財８３点を含む
　多くの美術品及び古典籍を所蔵する。
　静嘉堂とは弥之助の堂号で、中国の古典『詩経』から、
　＜祖先の霊前への供物が美しく整う＞という意味の
　「邊豆静嘉（へんとうせいか）」からとられたそうであった。
　文庫は小弥太が父の十七回忌に納骨堂の隣に建てた。

今日の展示では、何れも国宝の、俵屋宗達筆の「源氏物語関屋・澪標図屏風」や「曜変天目茶碗」
も見ものであった。

この日は小雨模様のお天気だったが、美術館周辺の紅葉が美しく、昔の記憶から大きく変容した
二子玉川駅前の夜景も季節感に溢れて見事であった。